「隣の土地が長いことほったらかしにされてて、雑草だらけで虫もひどい。なんとかしてほしい。」
「土地の所有者は死んでしまっている。相続人はわからない・・・」
「なんなら自分が隣地を買ってもいいのだけど、いったいどうしたら・・・」
というようなお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このような場合、すぐ思いつくのは下記のようなことでしょうか。
①所有者もしくは相続人を探して連絡し、必要な管理をしてもらう
②所有者もしくは相続人を探して連絡し、売ってもらえないか聞いてみる
・・・ですが、この「所有者もしくは相続人を探して連絡し」ということが、かなりの難題になることもしばしば。
特に所有者が居所不明な場合、所有者が死亡していて相続関係が不明な場合など、調べるだけでも大変です。
地元の近所の人に聞いたり、不動産屋さんに相談したり、役所にどうにかしてもらえないか頼んだり・・・
色々と骨を折ってみてもそれでも問題は解決しない、悲しいですがそんな場合も多いのかもしれません。
そんな時2023年4月1日から施行された「所有者不明土地管理命令等申立」が解決方法のひとつになります。(民法264条の2~)
今回はこの所有者不明土地管理命令の申立てについて簡単に説明します。
所有者不明土地管理命令とは
必要な調査を尽くしても土地の所有者が不明である場合、この申立てを裁判所に対して行い、必要性が認められれば「管理人」が選任されます。
以降は選任された管理人がその土地の管理処分権限を有することになるので、上記の困った状況が解決することになります。
例:「隣の土地が長いことほったらかしにされてて、雑草だらけで虫もひどい。なんとかしてほしい。」
→管理人により除草作業等、適切な管理がなされるようになる
例:「なんなら自分が隣地を買ってもいいのだけど、いったいどうしたら・・・」
→管理人と売買契約を結び、自分所有にすることができる(裁判所の許可必要)
この制度が始まり、困った状況の解決方法がひとつ増えたと言えますね。
なお、この制度の申立てができる人は
[所有者不明の土地の管理につき利害関係を有する者]
具体的には、
- 当該土地の隣地の所有者
- 当該土地の買受希望者
- 公共事業の実施者 などです。
具体的なケース
この所有者不明土地管理命令を活用する具体事例はこんなケースです。
- Xさんの土地の隣は長年放置されている
- 登記簿上所有者はA(Aはすでに死亡)
- Aの相続人はB(Bは所在不明)
このような場合にXさんは、裁判所への申立てをし管理人を選任してもらうことで、適切な管理をしてもらうことができます。
また、裁判所の許可を得て、Xさんは管理人と売買契約を結び自分の所有にすることも考えられます。
ネックは費用負担です。
Xさんはこの申立てをする際「予納金」を裁判所に納める必要があり、管理人の報酬や管理費用に充てられます。
このような費用は本来、所在不明のBが負担すべき費用ですので、最終的にXさんはBに請求することができますが、Bが所在不明な場合は現実的ではありません。
ですが、
「なんだったら自分が買っていいのだけど、所有者がわからないからどうにもできない」
というような方にとっては、この制度が解決策のひとつになることは間違いないでしょう。
★上記申立書を作成した案件が完了しました。
簡単ですが経緯等を下記のページにまとめています。
『所有者不明土地、売買による所有権移転が完了しました。』
あさぎり司法書士事務所では、新しい制度も踏まえ裁判書類作成業務を行っています。
このようなお悩みがある方は一度当事務所までご相談ください。
司法書士 井上安恵