この記事の続きです。
https://asagiri-shihou.jp/archives/1178
(所有者不明土地管理命令の申立(令和5年4月1日施行の新制度))
※以下、依頼者から了承をもらって記事にしているものの、内容は一部脚色しています。
去年、裁判書類作成業務として所有者不明土地管理命令の申立書を作成し、提出していた案件、先日、無事に依頼者へ名義変更が完了しました。
この制度の運用自体、去年2023年4月に施行されたばかりのもの。
申立書を作成する私はもちろん初めてでしたが、裁判所の方も新制度ということでやや手探りなところがあったようです。
そのような事情からか、きめ細かくご指導いただいたりご意見もいただけたりしたので、大変助かりました。
(所有者不明にもパターンがいくつかあろうと思いますが、私のケースは管轄では第1号の申立だったようです。)
選任された所有者不明土地管理人の方にも大変お世話になりました。
無事に名義変更まで完了したので、ざっくりとした概要をまとめてみます。
該当の土地が農地で、別途、依頼者に農地法の許可手続きをしてもらった関係もあり、日にちがかかりました。
0.相談・受任・詳細調査・申立書作成
ここで約3ヵ月かかりました
1.所有者不明土地管理命令申立書の提出
2.依頼者(申立人)が予納金の納入
3.異議催告の官報公告
4.所有者不明土地管理人の選任
申立書提出から管理人選任まで約3ヵ月 (相談を受けてから約半年)
5.相続財産法人へ名変登記
6.依頼者(申立人)と管理人との間で、該当土地の売買契約内容などにつき合意
7.当事者間で売買契約締結
8.管理人から裁判所へ売却許可申請
※該当の土地が農地だったこともあり、5から8まで約6か月要しました。(農地法3条許可は依頼者が別途手続き)
9.売買代金決済・所有権移転登記手続
10.依頼内容完了
(初回相談から約1年ちょっとで完了)
この制度を活用する前は下記の図のような状況でしたが、所有権移転が完了し、該当土地が依頼者名義になったことで「農地として活用しやすくなった」と依頼者には喜ばれました。
周辺も農地が多い地域なので、害虫・害獣予防の観点からも地域の農業振興にもつながったのではないかと思います。
今回のケース、私自身もとても勉強になりましたし、依頼完了まで約1年という長期対応となり、思い入れのある事案となりました。
本当は、所有者不明の状態になる前にどうにかできていれば、依頼者も、この土地の元所有者も良かったんだろうなぁとは思います。
それでも過去には戻れませんし、現状を前提として、最適な解決方法を探して、対処していくしかありません。
日本の所有者不明土地の面積を集めると、九州の面積よりも広いと言われています。
この所有者不明土地管理命令申立の制度の活用が、解決策のひとつです。
デメリットは、費用と時間と手間です。
予納金の納入が必要で、推測ですがおそらく20万円以上~はかかるのではないかということ。
+当然、土地の売買代金も必要であり、手続きには時間と手間もかかる。
他人様名義の土地をどうこうしようというのだから当然かもしれません。
とはいえ、従来からある相続財産管理制度と比べ、この所有者不明土地管理制度は該当土地部分だけに焦点をあてることができるので、費用・時間・手間は格段にとっつきやすいです。
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あさぎり司法書士事務所 司法書士 井上安恵
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